書評「『ミュルダールの経済学――福祉国家から福祉世界へ』を読む」をMMエッセイズ2に掲載しました。

書評「『ミュルダールの経済学――福祉国家から福祉世界へ』を読む」をMMエッセイズ2に掲載しました。初めの部分をご紹介がてら以下に写しておきます。

カール・グンナー・ミュルダールは、スウェーデン型福祉国家形成に多大な寄与をなし、1974年にノーベル経済学賞を受賞した大学者です。
彼の研究領域は極めて幅広く、アメリカの財団に依頼され黒人差別問題を研究したり、あるいはインドに渡り低開発国経済を研究したり、また国会議員や国連機関の委員となって自国および国際社会での政策作成に携わったりしました。このような多面性の故に、これまで彼の経済学の全体像を統合的に描くような研究はなかったそうです。そのような状況を世界で初めて打開したのが本書『ミュルダールの経済学』(2010年)です。同書で藤田菜々子氏は、ミュルダール経済学の全体像が「累積的因果関係論」を中心にして展望できると論じ、さらにはミュルダールが理想とした福祉世界というヴィジョンについて詳しく述べています。
読後特に印象に残ったことにミュルダール経済学が平等を最高の価値だと明確に規定していることがあります。拡張しすぎた貧富の格差を是正すべきだと多くの人々が訴えている今、平等を目指すミュルダールの考えは極めて示唆に富むものだと本書は指摘していますし、私もその通りだと思いました。そこで皆様に是非本書を手に取っていただきたいと考え、以下で本書の一部概要をご紹介することにした次第です。
ところで、「サングラハ 第142号」(2015年7月発行)と「サングラハ 第143号」(2015年9月発行)でご紹介しましたピケティの税制案は、まさに格差是正を目指したもので、その目的はミュルダール経済学のものと重なります。そこで彼の考えとミュルダール経済学との比較もしてみました。また、「緑の福祉国家」という環境問題の解決も視野に入れたスウェーデン発の新しい福祉国家像を、古典的福祉国家建設に力のあったミュルダール経済学の枠組みで扱うとどうなるのかも検討してみました。

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